訪韓中国人客を呼び込むため、韓国政府がなりふり構わぬ態度に出る。
中国のお金持ちをターゲットに、5年間何度でも訪問できる数次ビザ「韓流ビザ」(仮称)を発給する方針を固めたのだ。早ければ来年1月から始めるとしている。韓流といえば、韓流スターの中国での活動を規制する「限韓令(韓流禁止令)」が本格化することへの懸念が韓国で高まる。その中国に頭を下げるわけだ。経済面で中国に依存する韓国にとって“韓流締め出し”のダメージは大きいが、年間100兆ウォン(約10兆円)以上を海外で消費する中国人客の誘致し、“爆買い”で埋め合わせようと目論む。
金持ち以外の中国人は来るな…
韓国紙、朝鮮日報(日本語電子版)によれば、韓国政府の高官が、早ければ来年1月から、主に富裕層の中国人観光客を対象に、5年間に限って何度でも韓国に訪問できる数次ビザ「韓流ビザ」を発給すると明らかにした。中国人客の大半が安価なツアーで訪韓するという問題点を是正し、中国の富裕層を呼び込むためと説明しているという。言い換えれば、金持ち以外は来るなということである。
今のところ、中国人客のほとんどは訪韓するたびにビザを申請する必要があるが、韓流ビザは、中国人が現地の指定旅行会社で300万ウォン(約30万円)以上の旅行商品を購入し、これを証明する書類を提出すれば発給を受けられる。1回の訪問で30日まで滞在可能としている。
同紙によると、韓国政府がこのビザの発給を決めた背景には、2014年に延べ1億人を突破し、20年には延べ2億人に達すると見込まれる中国の海外旅行者を呼び込むことがある。日本などアジア諸国だけでなく、欧米各国までもが、年間100兆ウォン以上を海外で消費する中国人客の誘致に躍起になっており、韓国としても負けられないわけだ。
中国側は韓流締め出しに躍起だが…
ただ、その中国は“韓流締め出し”に乗り出している。韓国紙、東亜日報(日本語電子版)に11月下旬掲載されたコラムによれば、中国で韓流スターが登場するドラマや広告、映画の放送を禁止する「限韓令」が本格化する模様だ。7月に米軍による高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国配備決定の発表後、北京で行われる予定だった人気ドラマ「むやみに切なく」の主人公キム・ウビンとスジのサイン会が突然中止される第1次禁止令があった。さらに、「韓日軍事情報保護協定」仮署名を機に、中国当局が韓流を全面的に遮断するだろうとの憶測も出ている。
また、韓国紙、中央日報(日本語電子版)は、中国が来年1月1日からインターネット放送の出演者に対して実名を義務付けるとともに、外国人の場合、事前に出演許可を取らせるなどインターネット放送規制を大きく強化すると報じた。限韓令によって苦戦を強いられている韓流コンテンツにとっては、さらなる悪材料になるとみられる。
中国に依存せざるを得ない現実
だが、中国が韓国にどれほどの“制裁”を課そうとも、韓国は中国への依存体質から抜け出すことはできない。貿易など経済面は言うに及ばず、観光産業の中国への依存度はますます強まっているからだ。
朝鮮日報によれば、今年予想される訪韓中国人客は800万人で、訪韓外国人客全体の半分近くに迫る。だがその多くはショッピング主体の安価なツアーで訪れるため、質的な変化が必要だとの批判が政府に相次いでいた。
韓流ビザが導入されることで、韓国政府は、来年は30万人、20年までに最大100万人がこのビザの発給を受けると見込んでいるという。政府関係者は今回のビザについて、「中国高所得層の観光客を対象にした高付加価値の旅行商品と、ビザの特典を絡めた初の事例」と強調する。そのうえで「中国の富裕層が韓国を訪れて財布を開けば、低迷する内需の回復にも大きく役立つ」と期待を寄せている。
つまり、中国の“韓流締め出し”がこれ以上進んだとしても、韓国は中国人に頭を下げてまで「来てください」と頼まなければならないという哀しい現実があるのだ。
http://news.livedoor.com/article/detail/12465662/