トンスル(똥술、糞酒、Ttongsul)は、韓国で飲用されていた人糞を使った水薬の総称。特に人糞酒を指す。今日では、ごく少数の伝統主義者を除いて飲用されることはない。
トンスルは1960年代に衰退し、今日ではその存在さえ知られていないことがイギリスのデイリー・メールの調査によって明らかにされた[1]。 大別して3種類がある。
野人乾水
15~16世紀に李氏朝鮮時代の女医・大長今が、第11代朝鮮国王・中宗に解熱剤として処方したことで知られる[3][4]。 韓方医療(韓医学)であるが、民間療法として伝承されてきた歴史もある。朝鮮半島では人糞を乾燥させ粉末にしたものを「ヤインゴン, 야인건(野人乾)」と呼び、それを煎じたものを「ヤインゴンス, 야인건수(野人乾水)」と呼ぶ。 日韓併合時代の韓国の風俗を蒐集した『朝鮮風俗集:全』にも熱病の薬として記録されており[5]、最も歴史が古く、長い間使われたトンスルである。ユネスコ世界文化遺産?
一般的に、トンスルがユネスコ世界記録遺産や世界文化遺産の指定を受けたと記載される場合がある。これは2009年7月31日に、破棺湯(野人乾水)の製法を載せた『東醫寶鑑』がユネスコ世界記録遺産に指定されたのであって、トンスル自体が直接世界遺産、人類口伝及び無形遺産傑作などに指定されたわけではない。人糞酒
日韓併合後から朝鮮戦争時に生まれた民間療法であるため、地方によって作り方に差異があり、体験談や伝聞のみで文献には残っていない。骨折・打撲・腰痛に効果があるとされる。[2]一般にトンスルと言えばこれらを指す。
人糞酒が生まれた時期
人糞酒の製法に類似した物は文献に残っておらず、野人乾のように正式な固有名もないため韓医学ではない。 朝鮮風俗集に記録された骨折・脱臼・捻挫の民間療法は「松葉を蒸して暖める」「柳の皮で縛る」「冷水で冷やす」「蟹を煎服する」[8]というもので、当時は人糞酒という民間療法が存在していない。 そして、とあるように、日韓併合後に日本が整備するまで汲み取り式便所(便壺)はなかった。また朝鮮総督府の指導により、迷信や不衛生な民間療法が禁止され廃れた。しかしその後の戦争によって物資が不足し困窮する中で新しい民間療法が求められ、人糞酒が生まれたと考えられる。
伝統製法
近年発見された伝統製法。秘伝であるため、全く記録に残っていない。- 赤ちゃんのウンコを焼いた物と複数の韓薬(秦皮(?)、ホンア、猫の骨等)を酒に漬ける[11]。全ての疾患に治療効果を発揮するとされる。
- 6歳の子どもの大便に水を混ぜ、丸1日発酵させる。次に、炊いた白米と酵母、糞尿を混ぜて酒にする[12][1]。骨折・打撲・腰痛のほか、てんかんにも効能があるとされる。
トンスルに関する報道の歴史
- 2009年7月31日、トンスルを紹介する記事をロケットニュース24(β)が配信[13]し、livedoor ニュースなどニュースポータルに掲載された[14]。それによると、韓国に嫁いだ日本人女性のブログ[6]を 紹介し、嫁ぎ先で『トンスル』に出会い「ウンコ酒」に困惑した様子が記載され、記事では「特に韓国の田舎では愛飲されているようである」とされた。これに よってインターネット上において「韓国人は『ウンコ酒』を愛飲している」という噂が爆発的に広まり、そこでは韓国ですら非常にマイナーな存在だという事[2]、薬であることなどは語られなかった[15]。韓国紙のヘラルド経済は、現在はほとんど飲む人はなく、報道は事実ではないと反論したが[2]、記事の元となったブログにはコメントが殺到し、2009年8月3日にブログ主はコメントをすべて削除した上で「旦那のうわさ話を鵜呑みにして書いた」とし、「口裂け女出没」のようなレベルの話で、真剣に受け止めないでくださいと説明するに至った。
- 2012年11月、ロケットニュース24ではトンスルを半年間に渡る調査で発見し購入。トンスルは現在の韓国でも製造がされていること、店では買えず事前の注文でトンスル販売員から直接買えることなどを報じた[11]。ロケットニュース24が取材した製法では、子供の便を250℃の電気オーブンで30分間焼くため隣近所に悪臭が匂い、それを朝鮮人は韓方や韓薬と呼称する漢方薬と猫の骨とともに最低2ヶ月間酒に漬け込み、茶色の液体が完成するという。女優の千絵ノムラが実際にトンスルを飲む動画が公開された[16]。2012年12月28日には、ガールズエアバンド「ドッペルゲンガー」のメンバーである北條まみ、加藤遥、小田あさ美、由井香織、加藤桃子の5人に、原料を秘匿して飲ませて感想を聞いた記事を掲載した[17]。
- 2013年8月17日にVICE JAPANは、ウチダ・ユカ記者が韓国のリー・チャン・スー医師を取材し、目の前でトンスルを作ってもらい、記者が飲んでみたが、そのあと道で吐いてしまう、という記事と動画を公開している[18]。同20日には英紙デイリー・メールが[1]、同22日には中国の環球時報が香港の文匯報を引用して[12]、同23日には中国の広州日報もデイリー・メールを引用して、日本人女性記者が李昌洙医師を取材し、実際にトンスルを作るところをビデオカメラで撮影し、女性記者が試飲した事を報じている[19]。